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第10回 オリーブ収穫を巡る興味深い話


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第10回 オリーブ収穫を巡る興味深い話

第9回 オリーブ収穫におけるさまざまな工夫

第8回 オリーブオイルのヌーボー「ピエトラ・コロンビナ」の魅力

第7回 生産者の顔が見える?TOSCANOエキストラバージンオリーブオイル

第6回 TOSCANOエキストラバージンオイルが生まれるまで

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鈴木俊久のオリーブオイル講座

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第10回 オリーブ収穫を巡る興味深い話

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一度はやってみたかった乳搾り?

この写真は、数年前にスペイン・アンダルシア地方のハエンのオリーブ畑で収穫作業を行ったときのスナップです。先月お話した「ミルキング」という樹の枝を手でしごいてオリーブ果実を収穫する方法です。
現在、この方法で収穫が行われることはかなり珍しく、現地を回っていてもなかなか目にする事ができません。枝を両手で軽くしごき、採れた実を首からぶら下げた籠に入れ、籠が一杯になると近くに敷かれたビニールマットに空けて実を集める、という作業を繰り返します。実をしごき取るのにそれほど力はいりませんが、鈴木氏このくらいの大きさの樹だと1本収穫するのにおよそ20〜30分くらいの時間がかかり、結構、大変な作業でした。「私にもやらせて!」という突然の申し出に、作業していた女性(収穫作業のためポルトガルから来ているそうです)は快くOKしてくれましたが、そのあとの彼女の感想は「この寒いのに、なんて物好きな日本人!」だったそうです。



   
鈴木俊久
鈴木俊久 プロフィール

2002年11月に日本ではじめて国際オリーブオイル協会(International Olive OilCouncil:IOOC)からオリーブ・オイル・テイスティング・パネルのカンパニーパネルとして認定を受けた。国際オリーブオイル協会とは、スペイン・マドリッドに本部を置き、 国際取引基準の策定、技術協力、生産プロセスの改善、品質の保護・改善、知識普及、モニター調査、国際協力体制の強化などを実施している団体。加盟国は、イタリア、スペイン、ギリシャ等のEU諸国の他、アルジェリア、クロアチア、エジプト、イスラエル、ヨルダン、レバノン、リビア、シリア、チュニジア、イラン、モロッコ、セルビア-モンテネグロの国々。

 

表作と裏作が交互にやってくる

丹誠を込めて栽培され、収穫されるオリーブの実。しかし、その収穫量はほぼ一年ごとに表作(比較的収穫量が多い年)と裏作(比較的収穫量が少ない年)を繰り返すという、果物特有の生態サイクルに基づく性質をもっています。これは1本のオリーブの樹でも、今年実がなった枝は翌年実を付けないという性質によるものです。国別の生産量の統計データを見ると、例えばスペインでは2001年/2002年は表作、2002年/2003年は裏作、2003年/2004年は表作といった具合に1年ごとに生産量の推移するケースが多いのです。(北半球でのオリーブの収穫は冬期の10月頃から翌年の3月くらいに行われるので、このように2年をまたぐ表記を使います。)ただし、裏作と聞くと、オリーブオイルの品質自体も低下してしまうと思われがちですが、そのようなことはありません。裏作の年でも質の高いオリーブオイルは生産されます。ただ、その絶対量が減ってしまうということなのです。逆に、そういう年だからこそ、通常搾油に使われないテーブルオリーブ用品種から搾った青々しい特徴的な風味のオイルに出会えるようなチャンスもあります。このような生態サイクルに基づく収穫量の上下とは別にその年の気候による影響や害虫の発生によってダメージを受けることがあります。例えばスペインの1999年/2000年シーズンは本来、表作に当たる年でしたが、気候的な影響を受けて裏作であった前年を下回る生産量になってしまったことがあります。ちなみに今年のイタリアは裏作の年に当たりますが、BOSCOは使用するオリーブオイルを厳選しているので、安心して存分にそのおいしさを堪能していただけます。

IOOC 資料
▲ IOOC資料 「主要生産国の生産量推移」

 

世界規模で需給バランスを考える時代

オリーブオイルの生産者にとって不作は、非常に大きな問題です。当然ですが原料価格の高騰に連動してオリーブオイルの製品のコストが上昇してしまうからです。近年そのおいしさはもちろん、健康や美容への効果が知れわたったことでオリーブオイルの需要が急速に世界中に広がっています。今後予測されるアメリカや中国などの需要増加に対して、従来のオリーブオイル生産国だけでは需給バランスを取ることが厳しい状況になりつつあります。近年ではアメリカやオーストラリアなどでもオリーブの樹が植えられ、オリーブオイルの生産もそろそろ開始されだしましたが、需要の急激な増加にはなかなか追いつけないと思われます。しかも今年は既にご存知の方も多いかと思いますが、世界最大のオリーブ産地のスペインアンダルシア地方は1月〜3月にかけての霜害、5月〜8月にかけての記録的な干ばつに見舞われました。従って、本来であれば表作の今年は昨年を上回る収穫量が見込めるはずでしたが、現在の予想では昨年よりも更に30%減という非常に厳しい見通しになっています。スペインは世界最大のオリーブオイル生産国であり、世界のオリーブオイル相場に非常に大きな影響力を持っています。この状況を考えると世界規模での需給バランスが崩れることは確実で、ヨーロッパのマーケットでは安売りを控える動きがでてきています。

 

収穫に適した樹齢は20年以上

  ところで、皆さんは収穫に適したオリーブの樹齢をご存知ですか? 年輪を重ねているものほどオリーブの味わいも深いのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。近年、新たに植樹されるオリーブは比較的短期間で収穫が可能となる品種が植えられていますが、それでも収穫できるまで4〜5年は掛かります。その後、木の成長に合わせて収穫量も増えていきますが、およそ20年で品質や収穫量はピークとなり、その後20〜30年間位はこの状態が続くと言われています。栽培地では古くなった木や枯れてしまった木を順次新しい木に植え替えており、オリーブの質、量を一定に保つ努力を続けています。また、単に農業的な生産性の理由ではなく、風味の嗜好性(というより商業性?)から栽培品種が選ばれているケースもあります。例えばスペイン・カタルーニャ地方の代表的な品種にアルベキーナいう小粒であまり収穫性のよくない品種がありますが、近年はその風味の良さからスペイン各地で栽培が行われるようになっています。  イタリアのトスカーナなどでは樹齢100年とか200年といった文字どおり年輪を重ねた木が、若い木に混じってポツンとたたずんでいることも珍しくありません。中には栽培されていたというより、自生していたような木も多いようですが、古いものを大切にするトスカーナ地方の気風をこんなところからも感じることができます。

 

徹底的に利用されるオリーブ樹

イタリアでは、オリーブの樹は国に登録されているという理由だけでなく、「神聖な樹」といった意識が強いためむやみに伐採することができないのです。ご存知ない方がほとんどだと思いますが、オリーブの樹は硬くて良質な木材でもあるため、古くなったり枯れってしまって伐採された木は様々なかたちで再利用されています。例えばイタリアトスカーナ地方などでは廃木を家具や額縁、ナイフの柄など各種の生活用品に再生している事例が見られます。また、収穫終了後に剪定された木の下部の枝は堆肥としてオリーブ畑に撒かれます。昨今、環境保護の観点から、さまざまな分野で資源の有効活用の重要性が取りざたされていますが、オリーブの栽培地でははるか昔からごく自然な形で貴重なオリーブ樹のリサイクルが行われていたのでしょう。さらに付け加えれば、オリーブの搾り粕は燃料用に使われ、その灰までも肥料として利用されているのです。

オリーブの樹齢
3年
20年 推定100年以上
▲ 3年 ▲ 20年 ▲ 推定100年以上


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